◇太子爺◇ * * * * * * * * * * "とびぬけた頭脳の子は、腹からでるとまもなく死んだものだ。だが悪魔くんは、神が殺しそこねたのだ……" +***+
+***+ 銃弾に貫通されたとき、これは定めなのだ、と松下一郎は悟った。 彼はどこまで行っても人であり、父と母の子供。 架せられた鎖の元で、届く範囲でしか身動きが取れない。 そう、自分は。…痛いほど、甘い。 「ならば、父に骨を返し、母に肉を返そう。肉親の情が僕の目的の妨げになるのなら、僕は両親を捨てるのすら吝かじゃない。」 血塗れの両手とブラックアウトする視界を抱えながら、少年は呟いた。 「そうして、人の子の情というものから解脱しよう。…さようなら、お母さん。」 瞬間、掬い上げに来た柔らかな手を少年は拒否し、静かに目を閉じた。 いつか混沌の人の世に舞い戻るために。 次に目が覚めるときには、既に人の世の定めを外れた少年。 ―――あれは、神が殺し損ねた子供。
END
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お題、「お母さん…。」です。タイトルは『封神演義』のナタ三太子のこと。 |