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―――ぼくらはまたかならずあえるから。
ずっと行方不明、というか行方が知れないのがデフォルトというか。
そういう悪癖のある（ついうっかり消息を知らせるのを忘れてしまう本人に悪気はないから手に負えない）仮面ライダー一号こと本郷猛が、久々にオヤッサンこと立花籐兵衛の所に顔を出したときの、まず第一声は怒声であった。
「ばかやろう！死んだなら死んだで連絡くらいよこせ！」
いや、まだ死んでいませんがと本郷が返事をするよりも早く、一緒に立花レーシングクラブを訪れた二号ライダーこと一文字隼人がワリィ、と笑って立花の「オヤッサン」の肩を叩く。
「俺に会いたかっただろう、オヤッサン」
「馬鹿を言え、誰が会いたいだなんて言った！」
「淋しかったって顔に書いてあるぜ、オヤッサン。無理すんなよ」
「してなどいるか！」
本郷が気安い言い合いをしている親友と恩人を微笑ましく見つめていると、どん、と肩の所をもう一人の親友に小突かれる。
「ホントだぜ、本郷。オヤッサン、黙っててもお前には会いたくて仕方がないんだから、電話くらいしてやれよ」
事件の報告は連絡とは言わないんだぜ、と近付いてきた滝和也にぐりぐり腕を肘で押され、本郷が敵わないなと苦笑する。
「そうだな…」
その時、オヤッサンと言い合いをしていた隼人が常人よりも遙かに鋭い聴覚でその会話を聞きつけたらしく、くるりと振り返って本郷に釘を刺す。
「おい、本郷、ソノまんま聞くんじゃねーぞ！滝だって不義理もいいとこなんだからな！久々に俺らより先に来てたからって威張るんじゃねーぞ！」
その言葉に滝がなにおぅ、と反論を試みた。
「んだと一文字！最初にガモン共和国に会いに行ったときには真美先生の所に居着くつもりだった男がそれを言いますかね？」
滝の言葉に、隼人がさっと顔色を変え、余計なことを思いだしやがってと舌打ちをする。
「そ…んな事ぁ、一言も言ってねぇ！」
しかし、滝はニヤニヤ笑い付きの追求を止めない。
「世界の平和は本郷に任せて俺はここに残るとか言っ…」
「だから、言ってねぇって！」
隼人が説得力がないほど真っ赤になって食ってかかる。
早速ツノを付き合わせる二人を呆れたように見ながら、立花は同じようにじろりと四人目の男を睨む。
「風見」
「申し訳ありません」
先輩二人の様子を先に見ていたV3こと風見志郎はあっさりと頭を下げ、立花もまぁ、お前のことだから心配はしていないが、と苦笑を浮かべた。それに気付いた滝と隼人が舌戦を止めてそちらに参戦する。
「おい、ちょっと、オヤッサン、それは贔屓じゃね？なんで風見だけお咎めナシよ？」
「そうだぜ、オヤッサン。ここはひとつ、がつんと！」
唱和する息のあった二人を、立花がぷつりと青筋を浮かべて怒鳴りつける。
「うるさいお前達！何ががつんとだ！頭がいい癖に計画性のない猛に、罠があればあるだけ力業で破ろうとする隼人に、無茶と無鉄砲が服を着て歩いているような滝！お前達三人に比べたら風見はよっぽどまともだと思え！！」
風見は横合いで聞いていてライダー達の保護者代わりでもある「オヤッサン」のあまりの的確さに拍手喝采したくなったが、なんとか堪えた。第一、本郷と隼人相手にここまで言える人間は立花を置いて他にない。
「オヤッサン、それはないよ」
「そうだぜ、ちゃんと俺と本郷は自分の力量を弁えて戦ってるよ」
本郷と隼人が同時に反論し、その後でタッグを組むダブルライダーらしい息の合った動きで同時に三人目を指さす。
「「…滝はともかく」」
そのダブルライダー評に流石の立花も吹き出し、風見も今度は遠慮なく拍手喝采をしてみせた。
一人収まらない滝がダブルライダーに食ってかかる。
「おい、ちょっと待てよそこの技バッタと力バッタ！！」
「んだと、誰が力バッタだコラァ！」
直ぐに反応して怒鳴り返す隼人の隣で、本郷がきょとんとした顔で傍らの風見を見た。
「技バッタというのは俺のことなのか？」
はぁ、と些かずれた反応に風見が嘆息する。
「いや、本郷さんはもう頼みますからそのままで居てください」
「ってーかそこの風車トンボも！この素ボケと天然お笑いライダーズを野放しにすんな！」
「待ってください滝さん、俺の所為ですか？！」
結局三人と別ベクトルをゴーイングマイウェイで航行する一人での仲のいいじゃれ合いに突入した室内の空気に、立花は溜息をつきつつも、長く離れていても一瞬でこの雰囲気に戻れる絆があるのならこれはこれでいいか、と思うことにしてコーヒーを入れるべく席を立ったのだった。
普段と同じ通りの優しい時間が流れ始めるまで、後僅か。
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+++END.
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