◇TENTACLE◇




※注意:サンプルにはカップリング描写のある内容が含まれています。






























 自分が姿を見せればきっと、アムロも出てくる。シャアにはそんな予感があった。

「愚民共にその才能を利用されている者が言うことか!」
「そうかいっ!」

 アムロが一瞬姿を現した瞬間、シャアは手にしていた閃光弾をアムロに向かって投げつける。

「!?」
「かかった!」

 元々、色素が薄い瞳が紫外線に弱いこともあり、バイザーのグラスを光の調節ができるものにカスタマイズしてあったシャアは目を覆うアムロに素早く駆け寄り、その手からバズーカーを蹴り飛ばして、腕を取って足下を払い、地面に組み伏せた。

「迂闊だな、アムロ・レイ」
「……俺は、ブライト達の脱出時間だけ稼げれば良かったからな」

 こんな所で俺に関わっている場合じゃないぜ、と嘲るように言われ、シャアはくつりと酷薄そうな笑みを浮かべた。

「アクシズの後部を切り離せるのがそんなに愉しいか? アムロ・レイ。大局は変わらんよ」
「抜かせ、核の汚染は防げる」
「それはどうかな? 核など、後から撃ち込めば済む話だ。アクシズさえ落とせばどうとでもなる」

 言いながら、シャアは両足で全体重を乗せてアムロを抑え付けると、空気濃度を確認して、アムロのノーマルスーツのヘルメットのバイザーを上げた。現れる癖のある褐色の前髪と光線の具合で青く見える瞳に久しぶりだなと呟き、シャアは自身もヘルメットを上げると、睨み付けてくる青年にいきなり噛み付くような口付けをした。

「!?…っ!」

 いきなりのことに驚いたアムロは、シャアの歯で唇を噛みきられてぐっと眉根に皺を寄せる。噛み付き返そうとするのをするりと退かれ、シャアはノーマルスーツのままの指先でアムロの唇に滲んだ血を拭う。そして、徐に先程のアンプルを取り出すと、蓋をねじ切って中にぽたりとアムロの血液の雫を落とした。

「な、…何を」
「なんだと思うね?」

 シャアは微笑むと、アンプルを傾けて、アムロのヘルメットの隙間に、いきなりその液体を流し込んだ。

「なっ…!!」

 ひやりとした冷たい液体の感触に、アムロがぞくりと肌を震わせる。飲まされるかと思って固く唇を噛んでいたので、悲鳴だけは上げずに済んだ。

「な、なにをする、気だ?」
「じきに分かるさ」

 すげなく返事をすると、シャアはアムロを抑え付けたまま、悠々とヘルメットを被り、アムロのバイザーも降ろした。

「ここは宇宙空間だ、いつまでもヘルメット無しでは危険だからな」
「なにを、」

 戯れ言を、と言おうとして、アムロはびくっと身体を竦ませた。

「な、なに…!?」

 シャアに注ぎ込まれた液体が、明らかに重力の法則に逆らい、アムロのノーマルスーツの中を、ぞろぞろと意志を持って這っていく感触がする。ぞっと全身を総毛立たせると、アムロは悲鳴じみた声で男を詰問した。

「貴様、何をしたんだ、シャアっ!」
「じきに分かる、と言っただろう?」

 怜悧な笑みを浮かべたシャアは、じっとアムロを冷ややかに見下ろしている。ノーマルスーツの下は下着しかつけていない。喉元からは素肌を伝い始めた液体は、ばくばくと不安で高鳴りだした心臓の上をひやりと冷やし、まだ下方に向かって滑り落ちていく。ジェルでも伝ったようにそれが這った後には冷たい粘液の感触が残り、アムロを一層不快な気分にさせた。










―――――『Le Roi Est Mort, Vive Le Roi』



※この文章はあくまでサンプルです。内容は予告無しに変わることがあります。








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