「…これから先、ずっと一緒に暮らしてくれないか、アムロ。」
「いいよ。」
存外あっさり受け容れられたプロポーズに、クワトロ大尉…シャアがほっと胸を撫で下ろす。
「良かった…君に断られたらどうしようかと思っていた。」
安堵の口調で言われ、アムロが軽く照れたように微笑む。
「断るわけ…ないじゃないか。」
その言葉に、シャアが僅かに表情を曇らせる。
「そうか…?瘻付きだし、この年だし…正直、一緒の生活は危ぶまれるんじゃないかと…。」
「ばぁか。」
アムロがもっととろけたような表情を浮かべ、微笑んでシャアの首筋に腕を回す。耳元で、囁くように優しく。
「その…優しい、そんな優しいあなただから…俺は。」
「アムロ。」
耐えきれなくなったように、シャアがアムロを掻き抱いて深い口付けを交わした。アムロが鼻で甘い息を鳴らす。
「…ん…ふぅ…。」
「アムロ…一生大事にする。不自由はけしてさせない。幸せにするから…。」耳元で、そう何回も繰り返す。
「んー……。」
照れて困ったように小さく頷くアムロが愛おしくて、シャアはもう一度強く抱きしめる。
ロンド・ベル隊解散前夜の、それは出来事であった。
何とはなしに予感はあったものの、なかなか言い出してくれないシャアに焦れて不安になっていたアムロが心底安心したように男の胸に体を預ける。
「……シャア、俺からもお願いがあるんだけど。」
―――"壷中天":雨野とりせ
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