目が覚めると、ベッドの中だった。
寝倒れる前迄はランニングとパンツだけだった身体には肌触りの良いパジャマが着せつけられ、床で固いノートパソコンを枕にしたはずの頭の下にはふかふかの羽根枕。
ぱりぱりに糊の利いたベッドシーツの中に独り横たわるアムロには、けれどもこんな所でこんな行儀良く眠りについた覚えはない。そんな記憶はない。
だけれども、いいかと身体を起こす。どうせアムロの記憶になど、大した価値はないのだ。アムロの精神や肉体と同じように。
書き換えるよりもdeleteのキーを押すことに決めて、のろのろとアムロはシーツの中で身体を捻る。
ここは出口のないおとぎの国だ。
望めばなんでも叶う。なんだって手に入る。例え、それが人間だって。
アムロはこの国のたった一人の住人で、そして恐らくは王様だ。
王といっても一番偉いからではない、一番孤独だから。
―――"漂白ノ煉獄":イクラ・ドン作
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