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「ハウルに心がないですって!たしかにわがままで臆病で、何を考えているかわからないわ。でもあの人はまっすぐよ。自由に生きたいだけ!」
その台詞を、後から知ったとき、心が確かに震えるのを感じた。お人好しのソフィー、僕には本当に心なんてないのに。
なかったのに。
大切な物だなんて思わなかったから、別に大事とも思えなかったから、簡単にくれてやってしまった。
心も、心臓も。
天から流れ星の数多降り注ぐ、あの日に。
その時の僕は、どんなに愚かしい存在だっただろう。
―――”未来で待ってて”
そう、叫んでいた君の言葉は確かに僕の胸にすとんと落ちたに違いないが、でも、その心を無くしたんだからお笑い種とは正にこのこと。ソフィー、気に病む必要なんか無い。
僕のことを知らなかったと、未来から来る君が過去のことを気に病むなど、本当に馬鹿げていて、優しい。
だって、僕は本当に君のこと分からなかったんだから。―――無くしていたんだから。
僕は君を待ち、君を語り続ける。―――自由に生きるとは、そういうこと。
心さえ、心さえ戻れば。
この胸に空いたぽかりとした穴に、温かく恋を感じることも出来るだろう。
この口唇が、君のことを感じることができるだろう。
今は未だ、空想することしか、できないけれど。
この口唇が祝福された未来に受けるであろう、甘やかな熱を待ち焦がれて。
今は、まだ。
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+++END
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